「舟を編む」 辞書つくりを魅力的に

監督 石井裕也

 言葉に対する特殊な感性ゆえに、人とのコミュニケーションに問題を抱える馬締光也(松田龍平)が、ベテラン編集者が定年退職した辞書編集部へ異動になる。
完成までに十数年かかるという新しい辞書の編纂は出版社にとってはお荷物でもあり、出版中止の噂が流れる。先輩編集者の西岡が既成事実を作って辞書編集部を継続させることに成功するが、人員削減を求められた西岡は自ら編集部を去る。期せずして責任者になってしまった馬締は監修者の松本、契約社員の佐々木らと辞書編纂に取り組む、というのが主軸のストーリーである。そこに馬締と大家の孫、香具矢(宮崎あおい)の恋というサイドストーリーが絡む。

 辞書編纂という地味な仕事を退屈させないストーリーに仕上げた力は見事と言って良い。常に用例採集(言葉集め)のためのメモを持ち歩き、辞書に掲載する見出し語を選定し、語釈(言葉の解釈)をめぐって議論を交わす。なにしろ見出し語24万という広辞苑や大辞林なみの辞書であり、気が遠くなるような作業には違いないのだが、それをとても魅力的に見せてくれる。
松田龍平が「まほろ駅前多田便利軒」とはまったく違う主人公を演じていておもしろい。宮崎あおいはさすが。板前の立ち姿も美しいが、香具矢が馬締に手紙の真意を問いただすシーンは独壇場と言っていい。いい加減なようで、実は気のいい先輩西岡をオダギリジョーが好演している。

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